8大基礎運動能力の定義と指導の視点
第8章では、全書26章にわたる運動遊びを8つの基礎身体能力へ体系的に整理しています。単一の運動テストではなく、多様な動きを網羅した日々の指導計画づくりの指針としてご活用ください。
状況の変化に応じて瞬時に方向を変えたり、合図にすばやく反応して走り出す力。鬼ごっこやボール・反応ゲームで育ちます。
関節の可動域を広げてケガを防ぎ、狭い足場や回転・跳躍時にも姿勢を安定させる力。平均台、マット、スカーフ遊びが効果的です。
自分の体重を手足でしっかり支え、適度な強度で長く動き続ける全身の基礎体力。鉄棒、跳び箱、クマ歩き、サーキットで養われます。
視覚や聴覚と手足をスムーズに連動させ、力の加減や動きのタイミングをコントロールする最高度の身体統合力です。
26教材×8大運動能力 総合対照マトリクス
全26章の遊び教材がどの運動能力の獲得に直結しているかを示した一覧表です。章名をクリックすると各章の詳しい指導案集へ移動できます。● は重点的に育つ核心能力、○ は遊びの中で複合的に養われる能力を示します。
| 遊びの教材・章名 | 敏捷性 すばやさ | 柔軟性 しなやかさ | 筋力 力強さ | 速力 スピード | 平衡感 バランス | 持久力 スタミナ | 協調力 連動性 | 調整力 巧みさ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1章: じゃんけん・手足反応遊び (猜拳) 室内・手指・反応 | ● | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ● | ● |
| 第2章: 親子・ペアふれあい体操 (親子雙人) 二人組・柔軟・スキンシップ | ○ | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● | ● |
| 第3章: リボン・スカーフ運動遊び (彩帶) 手具・リズム・表現 | ● | ● | ○ | ● | ● | ○ | ● | ● |
| 第4章: ボール遊び・基礎キャッチ (球的遊戲) 用具操作・手眼協応 | ● | ○ | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 第5章: なわとび・ロープジャンプ (跳繩) 跳躍・全身リズム | ● | ○ | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 第6章: 新聞紙あそび Part 1 (報紙) 身近な素材・手先・室内 | ● | ● | ○ | ● | ● | ○ | ● | ● |
| 第7章: 跳び箱・助走踏切遊び (跳箱) 大型器具・腕支持・跳躍 | ● | ○ | ● | ● | ● | ○ | ● | ● |
| 第8章: タイヤ運動あそび (輪胎) 園庭固定具・足腰強化 | ● | ○ | ● | ○ | ● | ● | ● | ● |
| 第9章: 低床平均台・直線バランス (短平衡木) 平衡感覚・足裏感覚 | ● | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● | ● |
| 第10章: 高床平均台・長距離渡り (長平衡木) 平衡感覚・空間認知 | ○ | ● | ○ | ○ | ● | ○ | ● | ● |
| 第11章: 体操マット・回転転がり (墊子遊戲) 床運動・体幹・回転感覚 | ● | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● | ● |
| 第12章: 鉄棒・ぶら下がり足抜き (單槓) 懸垂・握力・空中感覚 | ○ | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● | ● |
| 第13章: フラフープ・くぐり跳び (呼拉圈) 輪・ケンパ・空間認知 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 第14章: トランポリン跳躍遊び (彈簧床) 弾性器具・空中姿勢 | ● | ○ | ● | ○ | ● | ● | ● | ● |
| 第15章: 風船あそび・ゆったり追従 (氣球) 視覚追従・空間把握 | ● | ● | ○ | ● | ● | ○ | ● | ● |
| 第16章: 徒手・室内模倣あそび (徒手遊戲) 道具不要・動物模倣 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 第17章: 手遊び・指先運動遊び (手指遊戲) 微細動作・母指対向 | ● | ● | ○ | ● | ○ | ○ | ● | ● |
| 第18章: 足裏ボールタッチ・ステップ (腳踏球) 下肢操作・足眼協応 | ● | ○ | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 第19章: 基礎運動能力観察ガイド (體能評估) 発達把握・動作チェック | ● | ● | ● | ● | ● | ○ | ● | ● |
| 第20章: 安全能力・自己防護ガイド (安全評估) 危険回避・転倒防止 | ● | ● | ● | ● | ● | ○ | ● | ● |
| 第21章: パラバルーン・集団協同 (氣球傘) 集団遊び・タイミング | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 第22章: 大筋肉総合サーキット (循環體能) 複合運動・連続ステーション | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 第23章: 新聞紙あそび Part 2 (報紙續) 変形素材・見立て遊び | ● | ● | ○ | ● | ● | ○ | ● | ● |
| 第24章: 壁当てボール・反発予測 (壁碰壁) 壁面反発・動態予測 | ● | ○ | ● | ● | ● | ○ | ● | ● |
| 第25章: 川跳び・ロープ幅跳び (跨跳) 幅跳び・助走タイミング | ● | ○ | ● | ● | ● | ○ | ● | ● |
| 第26章: マット集團遊び・リレー (墊子接力) 集団リレー・協同性 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
領域別・代表指導案の実践例(全12選)
移動運動(走る・跳ぶ)、姿勢・支持(バランス)、用具操作(ボール・スカーフ・フープ)から、保育の導入や主活動に直結する12の代表的な指導案図解です。
つま先抜き足&ドッスン力強い足踏み交互歩行
保育者のタンバリンのリズムに合わせて、音を立てない「忍者のようなつま先歩き」と力強く地面を踏みしめる「巨人の足踏み」を瞬時に切り替えます。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
カエルさんジャンプ&やわらか両足着地
床に手をしっかりついて深くしゃがみ込み、両足で力強く床を蹴って前方へジャンプ。着地時は膝をやわらかく曲げてピタッと止まります。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
カラーコーンぐるっと回りダッシュ&減速ターン
左側の通路をまっすぐ力強く走り、奥のコーンを膨らまずに回り込んで、右側の戻りレーンを一気に駆け抜けます。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
ジグザグステップ・スラロームコース
等間隔に並んだマーカーの間を、小刻みなステップで左右に切り返しながら駆け抜けます。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
スローモーション歩行(静止バランスコントロール)
片足を高く上げ、空中で3秒キープしてからゆっくり着地。極限までスピードを落として歩くことで、姿勢保持筋を刺激します。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
足裏押し合いっこペダルこぎ(ペア下肢協応)
床に仰向けで向かい合い、互いの足裏を合わせて押し合いながら、自転車のペダルをこぐように交互に足を曲げ伸ばしします。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
マットまっすぐ前転・転がり起き上がり
両手をマットについておへそを覗き込み、背中を丸めてスムーズに前転。起き上がった後は両足でしっかり立ち上がります。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
お山くぐり&ハイハイ全身トンネル抜け
お友達や保育者が作った山型の足やトンネルの下を、お腹を低くして四つんばい・ハイハイで潜り抜けます。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
ふんわりボールキャッチ&胸の前抱え込み
やさしく投げられた中型ボールを目で追い、腕全体を広げて胸の前でやさしく抱え込むようにキャッチします。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
的当てスローイング(標的への力加減とコントロール)
壁に貼られた的やフラフープの標的に向かって、片手でしっかりボールを握り、腕を大きく振って正確に投げ入れます。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
風船ふんわり連続タップ(空間浮遊物へのアプローチ)
落ちてくる風船を手や頭で下からポンポンと連続して打ち上げ、床に落とさないようにキープします。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
パラバルーンみんなで大きなドーム作り(集団同期運動)
全員でバルーンの端を握り、「せーの!」の合図で息を合わせて持ち上げ、中に空気を取り込んで大きなドームを作ります。
指導案メモ:用具・導入・安全配慮
幼児の運動能力と指導案作成に関するQ&A
保育現場での指導計画への落とし込み方、調整力の重要性、個人の発達差への対応について解説します。
保育の指導計画(週案・日案)にこのマトリクスをどう活用できますか?
「調整力(コーディネーション)」とは具体的にどのような能力ですか?
異年齢(縦割り)保育や個人の発達差にはどのように対応すればよいですか?
文部科学省の「幼児期運動指針」とこの8大能力はどのように関連していますか?
幼児の運動遊び500選:理論編 第8章 各遊びの運動能力と8大基礎能力マトリクス
本書は洪南海氏の長年にわたる幼児体育の指導実務経験に基づく教材です。仁和幼児園が原著の核心を尊重しつつ、現代の保育現場のニーズに合わせてデジタル化・文字校訂・活動解説の補足・安全指引の改訂を行いました。
本書は保育指導での活用および非営利の研究引用として無償提供しています。引用時は『幼児の運動遊び500選』と明記し、本ページのリンクを添えてください。事前の許諾のない商業販売や大量複製は固く禁じます。
活動前に子どもの発達に合わせて難易度を調整し、防滑・十分な空間の確保と大人の見守りのもとで実施してください。持病や発達上の配慮が必要なお子様は、事前に小児科医または小児専門の理学療法士等にご相談ください。