幼児の運動遊び500選 · 理論体系(第8章)

幼児の8大運動能力×26章教材マトリクス: 指導計画・ねらいに応じた指導案選定ガイド

保育現場での指導案(週案・日案)作成を強力にサポート!敏捷性・柔軟性・筋力・速力・平衡感・持久力・協調力・調整力の8大基礎運動能力と、全26章(500例)の運動用具・遊び教材をクロス対照した総合選案マトリクスです。

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8大基礎運動能力の定義と指導の視点

第8章では、全書26章にわたる運動遊びを8つの基礎身体能力へ体系的に整理しています。単一の運動テストではなく、多様な動きを網羅した日々の指導計画づくりの指針としてご活用ください。

1. すばやさと瞬発力(敏捷性・速力)

状況の変化に応じて瞬時に方向を変えたり、合図にすばやく反応して走り出す力。鬼ごっこやボール・反応ゲームで育ちます。

2. しなやかさとバランス(柔軟性・平衡感)

関節の可動域を広げてケガを防ぎ、狭い足場や回転・跳躍時にも姿勢を安定させる力。平均台、マット、スカーフ遊びが効果的です。

3. 力強さと粘り強さ(筋力・持久力)

自分の体重を手足でしっかり支え、適度な強度で長く動き続ける全身の基礎体力。鉄棒、跳び箱、クマ歩き、サーキットで養われます。

4. 身のこなしと巧みさ(協調力・調整力)

視覚や聴覚と手足をスムーズに連動させ、力の加減や動きのタイミングをコントロールする最高度の身体統合力です。

全体系カリキュラム対照表

26教材×8大運動能力 総合対照マトリクス

全26章の遊び教材がどの運動能力の獲得に直結しているかを示した一覧表です。章名をクリックすると各章の詳しい指導案集へ移動できます。● は重点的に育つ核心能力、○ は遊びの中で複合的に養われる能力を示します。

遊びの教材・章名 敏捷性
すばやさ
柔軟性
しなやかさ
筋力
力強さ
速力
スピード
平衡感
バランス
持久力
スタミナ
協調力
連動性
調整力
巧みさ
第1章: じゃんけん・手足反応遊び (猜拳)
室内・手指・反応
第2章: 親子・ペアふれあい体操 (親子雙人)
二人組・柔軟・スキンシップ
第3章: リボン・スカーフ運動遊び (彩帶)
手具・リズム・表現
第4章: ボール遊び・基礎キャッチ (球的遊戲)
用具操作・手眼協応
第5章: なわとび・ロープジャンプ (跳繩)
跳躍・全身リズム
第6章: 新聞紙あそび Part 1 (報紙)
身近な素材・手先・室内
第7章: 跳び箱・助走踏切遊び (跳箱)
大型器具・腕支持・跳躍
第8章: タイヤ運動あそび (輪胎)
園庭固定具・足腰強化
第9章: 低床平均台・直線バランス (短平衡木)
平衡感覚・足裏感覚
第10章: 高床平均台・長距離渡り (長平衡木)
平衡感覚・空間認知
第11章: 体操マット・回転転がり (墊子遊戲)
床運動・体幹・回転感覚
第12章: 鉄棒・ぶら下がり足抜き (單槓)
懸垂・握力・空中感覚
第13章: フラフープ・くぐり跳び (呼拉圈)
輪・ケンパ・空間認知
第14章: トランポリン跳躍遊び (彈簧床)
弾性器具・空中姿勢
第15章: 風船あそび・ゆったり追従 (氣球)
視覚追従・空間把握
第16章: 徒手・室内模倣あそび (徒手遊戲)
道具不要・動物模倣
第17章: 手遊び・指先運動遊び (手指遊戲)
微細動作・母指対向
第18章: 足裏ボールタッチ・ステップ (腳踏球)
下肢操作・足眼協応
第19章: 基礎運動能力観察ガイド (體能評估)
発達把握・動作チェック
第20章: 安全能力・自己防護ガイド (安全評估)
危険回避・転倒防止
第21章: パラバルーン・集団協同 (氣球傘)
集団遊び・タイミング
第22章: 大筋肉総合サーキット (循環體能)
複合運動・連続ステーション
第23章: 新聞紙あそび Part 2 (報紙續)
変形素材・見立て遊び
第24章: 壁当てボール・反発予測 (壁碰壁)
壁面反発・動態予測
第25章: 川跳び・ロープ幅跳び (跨跳)
幅跳び・助走タイミング
第26章: マット集團遊び・リレー (墊子接力)
集団リレー・協同性
代表指導案ピックアップ

領域別・代表指導案の実践例(全12選)

移動運動(走る・跳ぶ)、姿勢・支持(バランス)、用具操作(ボール・スカーフ・フープ)から、保育の導入や主活動に直結する12の代表的な指導案図解です。

アクティビティ 8-1: つま先抜き足&ドッスン力強い足踏み交互歩行 イラスト

つま先抜き足&ドッスン力強い足踏み交互歩行

保育者のタンバリンのリズムに合わせて、音を立てない「忍者のようなつま先歩き」と力強く地面を踏みしめる「巨人の足踏み」を瞬時に切り替えます。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: ラインテープまたはマーカー、タンバリン(太鼓)
環境設定・隊形: 直線5mの安全な室内フロアまたはマットコース。スタートと折り返し地点を明示します。
安全配慮: フローリング上での強い足踏みはかかとへの衝撃を避けるため、足裏全体でやわらかく踏み込むよう声をかけます。
スモールステップ(易): 移動せずその場で「その場つま先立ち3秒 ➔ その場足踏み3回」から慣らします。
発展(難): タンバリンの「テンポが速くなったらつま先小走り、遅くなったら大股足踏み」と即時反応課題に発展させます。
声かけのヒント: 「抜き足差し足、ネズミさんだよ…トントン!今度は大きなゾウさんで力強く歩こう!」
アクティビティ 8-2: カエルさんジャンプ&やわらか両足着地 イラスト

カエルさんジャンプ&やわらか両足着地

床に手をしっかりついて深くしゃがみ込み、両足で力強く床を蹴って前方へジャンプ。着地時は膝をやわらかく曲げてピタッと止まります。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: マーク(飛び石代わりのウレタンマット)4〜6枚、体操マット
環境設定・隊形: マットを縦に敷き、マークを50〜80cm間隔で配置します。
安全配慮: 着地時に膝が伸び切ると関節に負担がかかるため、「膝を曲げてやわらかくピタッ」と止まる姿勢を意識させます。
スモールステップ(易): まずは跳ぶ距離を短くし(約30cm)、両手を床についてから足を寄せるスモールステップで行います。
発展(難): 止まらずにテンポよく「ピョン、ピョン、ピョン」と連続4回カエル跳びをつなげます。
声かけのヒント: 「お尻を低くして…グッと床を押してピョーン!音を立てずにやさしく着地できるかな?」
アクティビティ 8-3: カラーコーンぐるっと回りダッシュ&減速ターン イラスト

カラーコーンぐるっと回りダッシュ&減速ターン

左側の通路をまっすぐ力強く走り、奥のコーンを膨らまずに回り込んで、右側の戻りレーンを一気に駆け抜けます。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: カラーコーン2個、中央仕切りテープ
環境設定・隊形: 幅3m×長さ8m以上の直線コース。行きと帰りの進行方向を矢印で分かりやすく示します。
安全配慮: コーンを回る際の内輪差での転倒を防ぐため、曲がる直前に小刻みなステップで速度を調整するよう促します。
スモールステップ(易): 最初は早歩きでコーンを回り、走路のルール(左から行って右から帰る)を確認します。
発展(難): コーンを回った瞬間に保育者が提示した色のカードを見て、指定されたゴールへ進路を変える認知課題を加えます。
声かけのヒント: 「ビューンと走って、コーンの近くでブレーキ!くるっと小さく回って戻ってこよう!」
アクティビティ 8-4: ジグザグステップ・スラロームコース イラスト

ジグザグステップ・スラロームコース

等間隔に並んだマーカーの間を、小刻みなステップで左右に切り返しながら駆け抜けます。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: マーカーコーン5〜6個
環境設定・隊形: 直線8mのスペースに1m間隔でコーンを配置。
安全配慮: コーンを蹴って転倒しないよう、視線を少し前に向けてコース全体を捉えるよう指導します。
スモールステップ(易): 最初はゆっくり歩きながら左右にジグザグ進みます。
発展(難): コーンの通過時に片足で地面を強く蹴るサイドステップを取り入れます。
声かけのヒント: 「川の岩をすいすい避けるお魚さんだよ!左右にスイスイ進もう!」
アクティビティ 8-5: スローモーション歩行(静止バランスコントロール) イラスト

スローモーション歩行(静止バランスコントロール)

片足を高く上げ、空中で3秒キープしてからゆっくり着地。極限までスピードを落として歩くことで、姿勢保持筋を刺激します。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: なし
環境設定・隊形: 障害物のない平坦な床。
安全配慮: バランスを崩してもすぐに反対の足を出せるよう、無理に耐えすぎず安全に着地することを伝えます。
スモールステップ(易): 両手を横に広げて飛行機のポーズをとり、バランスを取りやすくします。
発展(難): 片足を上げた状態で「頭に手を当てる」など追加のポーズをとります。
声かけのヒント: 「ビデオのスロー再生だよ!ゆっくり、ゆっくり…1、2、3で着地!」
アクティビティ 8-6: 足裏押し合いっこペダルこぎ(ペア下肢協応) イラスト

足裏押し合いっこペダルこぎ(ペア下肢協応)

床に仰向けで向かい合い、互いの足裏を合わせて押し合いながら、自転車のペダルをこぐように交互に足を曲げ伸ばしします。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: 体操マット
環境設定・隊形: 背中が痛くならないようマット上で実施。
安全配慮: 急に強く蹴ると相手が後ろに滑るため、「やさしく力を合わせる」ルールを徹底します。
スモールステップ(易): 動かさずに足裏を合わせたまま押し合う静止押し合いから始めます。
発展(難): 「いっち、に、さん、し」と声を掛け合いながらテンポを速めます。
声かけのヒント: 「2人で力を合わせて大きな自転車をこごう!ギッタンバッコン!」
アクティビティ 8-7: マットまっすぐ前転・転がり起き上がり イラスト

マットまっすぐ前転・転がり起き上がり

両手をマットについておへそを覗き込み、背中を丸めてスムーズに前転。起き上がった後は両足でしっかり立ち上がります。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: 体操マット(必要に応じて坂道用傾斜マット)
環境設定・隊形: マットの周囲に十分な安全スペースを確保。
安全配慮: 頭頂部を直接打たないよう、「おへそを見て背中を丸める」姿勢を保育者が頭部に手を添えて補助します。
スモールステップ(易): マットの下にロイター板などを入れて傾斜を作り、自然に回転できるようにします。
発展(難): 前転後に手を使わずに立ち上がり、ピタッとポーズを決めます。
声かけのヒント: 「自分のおへそをしっかり見て、ダンゴムシさんになってコロリン!」
アクティビティ 8-8: お山くぐり&ハイハイ全身トンネル抜け イラスト

お山くぐり&ハイハイ全身トンネル抜け

お友達や保育者が作った山型の足やトンネルの下を、お腹を低くして四つんばい・ハイハイで潜り抜けます。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: なし(またはフープ・トンネル遊具)
環境設定・隊形: フローリングまたはマット上。
安全配慮: トンネル役の子どもの足を踏まないよう、間隔をあけて順番に進むよう声をかけます。
スモールステップ(易): トンネルの高さを高めに設定し、スムーズにくぐれるようにします。
発展(難): トンネルの高さを低くし、ほふく前進(ワニ歩き)でくぐり抜けます。
声かけのヒント: 「低いトンネルだよ!頭を低くして、スイスイくぐり抜けよう!」
アクティビティ 8-9: ふんわりボールキャッチ&胸の前抱え込み イラスト

ふんわりボールキャッチ&胸の前抱え込み

やさしく投げられた中型ボールを目で追い、腕全体を広げて胸の前でやさしく抱え込むようにキャッチします。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: やわらかいドッジボールまたはスポンジボール
環境設定・隊形: 周囲と十分な距離をとって実施。
安全配慮: 顔面に当たらないよう、必ず下から山なりの軌道で投げることを徹底します。
スモールステップ(易): 風船やスカーフなど落下速度の遅い素材を使って手の動きを覚えます。
発展(難): ワンバウンドさせてからキャッチする課題に挑戦します。
声かけのヒント: 「ボールをしっかり目で見て…お胸でギューッとやさしく抱っこしよう!」
アクティビティ 8-10: 的当てスローイング(標的への力加減とコントロール) イラスト

的当てスローイング(標的への力加減とコントロール)

壁に貼られた的やフラフープの標的に向かって、片手でしっかりボールを握り、腕を大きく振って正確に投げ入れます。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: 的(壁面ポスターまたはカゴ)、ボール3〜5個
環境設定・隊形: 投球ライン(2〜3m手前)を設定。
安全配慮: 投げ終わったボールを拾うときは、全員が投げ終わってから一斉に拾うルールを守らせます。
スモールステップ(易): 標的を大きくし、投球ラインを近づけます。
発展(難): 動くカゴ(保育者がゆっくり動かす)を狙って投げ入れます。
声かけのヒント: 「的をしっかり見て、腕を大きく振って…エイッ!」
アクティビティ 8-11: 風船ふんわり連続タップ(空間浮遊物へのアプローチ) イラスト

風船ふんわり連続タップ(空間浮遊物へのアプローチ)

落ちてくる風船を手や頭で下からポンポンと連続して打ち上げ、床に落とさないようにキープします。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: ゴム風船 1人1個
環境設定・隊形: 風のない室内ホール。
安全配慮: 上ばかり見てお友達とぶつからないよう、自分のスペースを保つよう促します。
スモールステップ(易): 保育者と一緒に1個の風船を交互に打ち合います。
発展(難): 右手・左手を交互に使って打ち上げるルールにします。
声かけのヒント: 「風船さんが落ちてこないように、やさしくポンポン打ち上げよう!」
アクティビティ 8-12: パラバルーンみんなで大きなドーム作り(集団同期運動) イラスト

パラバルーンみんなで大きなドーム作り(集団同期運動)

全員でバルーンの端を握り、「せーの!」の合図で息を合わせて持ち上げ、中に空気を取り込んで大きなドームを作ります。

指導案メモ:用具・導入・安全配慮
準備するもの: パラバルーン(パラシュート)1張
環境設定・隊形: 周囲に障害物のない広い室内ホールまたは園庭。
安全配慮: バルーンの中に入る際は、保育者の合図に従って出入りし、踏まれないよう注意します。
スモールステップ(易): 上下に小さく揺らして波を作る運動から慣れます。
発展(難): ドームを作った瞬間に全員で中に一歩入って座り込み、「テント」を作ります。
声かけのヒント: 「みんなの力をひとつに!せーのでバンザイ!大きなお山ができたね!」
よくある質問

幼児の運動能力と指導案作成に関するQ&A

保育現場での指導計画への落とし込み方、調整力の重要性、個人の発達差への対応について解説します。

保育の指導計画(週案・日案)にこのマトリクスをどう活用できますか?
今週のねらい(例:「足腰の安定とバランス」「用具を目で追う協応」)を定めたら、本マトリクスの該当列に「●」がついている章から用具や場所(雨天時は新聞紙や徒手、園庭ではボールやタイヤ)に合わせて活動を選定することで、偏りのないバランスの良い運動カリキュラムを組み立てることができます。
「調整力(コーディネーション)」とは具体的にどのような能力ですか?
調整力とは、敏捷性、平衡感覚、力加減、タイミングなどを脳で瞬時に統合し、自分の身体を思い通りにしなやかにコントロールする「身のこなしの巧みさ」です。幼少期に多様な感覚・運動経験を積むことで、生涯にわたる運動神経の土台が築かれます。
異年齢(縦割り)保育や個人の発達差にはどのように対応すればよいですか?
年齢で一律に区切るのではなく、課題の「距離」「高さ」「スピード」「ルール数」をスモールステップで調整します。例えばボール投げなら距離を縮める、平均台なら低床にするなど、すべての子どもが「できた!」という達成感を味わえる環境構成を心がけます。
文部科学省の「幼児期運動指針」とこの8大能力はどのように関連していますか?
日本の幼児期運動指針が掲げる「体のバランスをとる動き」「移動する動き」「用具などを操作する動き」の3領域・36の基本動作は、本書の8大基礎運動能力と密接に対応しています。本マトリクスを活用することで、指針が推奨する「多様な動きの獲得」を網羅的に実現できます。