「年月が経っても、あの男の顔が喜びと表情に満ちているのはなぜだろう?
そんな印象を周囲に与えることができれば、楽しい雰囲気は誰にでも伝染する。そういう人を一目見た瞬間に、「この人はきっといい習慣を持っている人だ」と感じる。
98歳で亡くなった宇野千代さんも、そんな魅力的な女性の一人だった。ある時、彼の著書に掲載されていた次の記事を読んだ。
"顔の表情も習慣だ。ある表情に慣れてしまうと、それが固定観念になってしまう。私の家は外気がとてもよく、家中の人が笑顔です。なぜですか?笑顔が習慣になれば、悪いことは起こりにくい。.......ああ、習慣だ、習慣だと思うと、思わず大笑いしてしまう。"人生の幸福、老後の幸福』より。
この一節からは、笑顔の絶えない家族の温かさが伝わってくる。
家庭で培われた習慣は、子供の教育に倍加的な効果をもたらす。子供の教育にとって、習慣はしばしば表情よりも重要である。
印象に残っているのは、家族で当時のチェコに旅行したときのことだ。
地下鉄の車内で、車両上部のリングを掴んでいたのだが、立ち上がった途端、前にいた6歳か7歳の2人組がチェコ語を話していた。 何を言っていたのかは定かではないが、「Have a seat(お座りください)」というような内容だったと思う。
子供の両側に座っていた両親は、子供に席を譲るよう指示しなかった。私たち老夫婦が目の前に立っているのを見るやいなや、まるでバネのように同時に席を飛び出したのである。この2人の子供たちが、いつもこのような習慣を持っていることは明らかだと思う。
この二人の子供たちの振る舞いから、彼らが霊的に豊かな家庭で育ったことがわかり、私の心は温かい幸福感で満たされた。当時、私はまだ65歳だった。
あの日から20年以上が経ち、私は90歳を超えたが、日本では「どうぞお座りください」と席を譲るという美徳を一度も重んじたことはない。
このような豊かで物質主義的な環境で育った日本の子供たちは、おそらく十分な精神教育を受けてこなかったのだろう!そう思うと、悲しみを禁じ得ない。
たとえ一度でも、宇野千代さんのような家族の温かさを我が家に入れてみてください。それが習慣であり、すべてを良くする習慣なのだから。
本文/『しあわせの15の習慣』より抜粋