脳と読書

ひとつは物体認識システム、もうひとつは言語回路である。認知神経科学者スタニスラウス・ディーハンの大著『脳と読書』では、子どもがいかにして読書を学ぶかを分析している。ディーハンの代表作『脳と読書』では、子どもの成長期が大人の読書ネットワークへとゆっくりと変化していく様子が分析されている。以下はその抜粋である。


かつては、赤ちゃんの世界観は「めちゃくちゃ」であり、脳はまだ十分に発達しておらず、ほとんど組織化されておらず、そのため大人のような脳を構築するためには多くの学習と多くのインプットが必要だと考えられていた。最近の研究では、この単純化しすぎた構造説に反論し、赤ちゃんの脳は単純で構造化されすぎていることが明らかになっている。最近の研究は、この単純化しすぎ説に反論している。

脳は再訓練の準備ができている。

その通りである!脳は思春期までずっと大きな可塑性を持っており、生後1年目であっても、学習と教育のための窓を開くことができるのである。

脳のブロックは言語習得に対応するように設定されている。

赤ちゃんは、生後数ヶ月のうちに驚くべき言語理解力を発揮する。生後数日で、「ば」と「が」の違いなど、音韻の対比に気づく。さらに、母国語の韻に特別な注意を払う。妊娠後期の3ヵ月には、すでに母親の胎内で母国語が何であるかを知っている(理解しているわけではないが、母国語のイントネーションには慣れている)。

彼らの言語能力は、左脳の神経回路に依存している。左の上側頭葉回路は音声を分析し、側頭葉の階層的組織によって音素、単語、文を抽出する。生後3ヶ月の赤ちゃんが文章を聞くと、ブローカ野と呼ばれる左前葉の下部でさえ活性化される。ブローカ野は文法規則が処理され、音声が話される場所である。  間違いなく、脳のこれらの領域は、言語習得を処理するように生得的にプログラムされている。もちろん、学習も重要な役割を果たす。 生後1年間で、赤ちゃんの言語中枢は周囲の言語に敏感に反応する。生後6ヵ月までに、すべての言語に固有の音韻空間である母音表現は、母語の母音に適応し始めるため、徐々に歪んでいく。生後11ヶ月から12ヶ月頃になると、子音が現れ始める。日本の赤ちゃんがrとlの区別がつかなくなるのはこの時期で、ちょうど私たちがヒンディー語の様々なt音のような外国語の子音の違いを聞き分けられなくなり始めるのと同じである。赤ちゃんの脳は、よく耳にする単語を分析する。

幼児の脳は、若い博物学者や統計学者のように、言語の断片を体系的に抽出し、分類し、定義する。音声入力の規則性を検出し、どの音が受け入れられ、どの音が受け入れられず捨てられるかを判断し、あっという間に母語の音韻規則が出来上がる。赤ちゃんは、どの音が最もよく聞こえるかを計算し、最もよく聞こえる音が脳の語彙の最初の単語になる。

6歳は母国語の基本文法をマスターできる。

2歳の誕生日を迎えるころには、子どもの語彙は驚くほどのスピードで増え、1日に10~20語ずつ増えていく。同時に、母語の基本的な文法規則も確立する。初めて読み聞かせを習い始める5、6歳までには、音韻の専門知識と数千語の語彙を持ち、母語の基本的な文法構造をマスターしている。  これらの規則や表現は暗黙的なもので、子どもは自分がそれを持っていることも、それがどのようにして生まれたのかも知らない。
話し言葉は常に、書き言葉が回路に現れる準備ができている。

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